厚生労働省の人口動態統計によると日本人の死亡理由の1位はがん、2位は心血管疾患(心臓病)、3位が肺炎、4位が脳血管疾患(脳卒中)となっています。この内、2位の心血管疾患(心臓病)と4位の脳血管疾患(脳卒中)の原因となるのが動脈硬化です。
動脈硬化という言葉自体はみなさん聞いたことがあると思うのですが、そもそも動脈硬化とは何なのでしょうか。突然なる病気なのでしょうか。
動脈と静脈
そもそも、動脈硬化の「動脈」とは、心臓から送り出された血液を体の隅々にまで行き渡らせる血管のことを指します。
逆に、身体の各機関から心臓に血液を送り戻す際の血管を静脈といいます。
心臓から出ていくのが動脈、心臓に戻ってくるのが静脈ということです。
血管はただ血液が通るだけの管ではなく、それ自体が縮んだり緩んだりして血液の運搬を助けているため、第2の心臓とも呼ばれるほど身体にとって重要なものになります。
動脈硬化とは
そして動脈硬化とは、動脈の内壁が肥厚し硬化した状態の総称です。
(厳密にはアテローム性動脈硬化、細動脈硬化、中膜石灰化硬化の3種類ありますが、一般的に動脈硬化といえばアテローム性動脈硬化を指しますので、本記事でもアテローム性動脈硬化を動脈硬化と呼ばせていただきます。)
動脈硬化が起こると血流が滞りがちになるだけでなく、血栓ができ易くなります。
血栓とは血液が固まってできるかさぶたのようなものですが、この血栓が動脈を詰まらせて脳や心臓への血流が途絶えると、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる疾患を引き起こします。
それ以外にも動脈硬化から生まれる疾患としては、狭心症、腎硬化症・腎血管性高血圧、腎不全、閉塞性動脈硬化症(足の動脈が狭くなり、最終的に壊死したりすること)、頸動脈狭窄症、大動脈瘤・大動脈解離などがあります。いずれも、命にかかわったり、日常生活に大きな支障が出る疾患ばかりです。
動脈硬化の進んだ動脈は、古いホースのようなものです。古いホースは内側に水あかやヘドロが貯まったり、ひび割れして水が漏れることもありますよね。動脈も、硬化が進むと、柔軟性を失って血液を末梢に送る働きが弱まります。
ちなみに、静脈硬化という言葉はありません。
静脈は動脈ほど圧が掛からないので、壁に傷がつくようなことが少ないためです。
静脈の病気は逆流を防ぐ弁の働きが悪くなって起こる、静脈瘤などがあげられます。
動脈硬化の原因
動脈硬化の3大因子は、脂質異常症、糖尿病、高血圧です。なので、基本的には肥満の人は動脈硬化を引き起こしやすくなります。
脂質異常症の場合は、増え過ぎたコレステロールによって血栓が作られる恐れがあり、高血圧は、血圧(血流の圧力)が強すぎるため、動脈が内部から傷つくことにより動脈硬化が起こります。
糖尿病の場合は性質上、脂質異常症や高血圧ともしばしば合併するためです。糖尿病患者の20%〜50%は脂質異常症と言われています。
動脈硬化の怖い部分として、動脈硬化がある程度進んでしまうと、後から脂質の異常等を改善しても、傷んだ血管を元の健康な状態に戻すのは極めて困難なことがあげられます。なので、とにかく肥満にならないようにするなど、日頃の習慣や意識が最も重要になります。
その他、喫煙者は非喫煙者より4倍ほど動脈硬化のリスクが高くなると言われています。
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動脈硬化を防ぐには
動脈硬化は、根本的には問題のある食生活や不規則な生活が原因となります。
既に肥満ぎみの方などは、まずは痩せましょう。肥満は動脈硬化だけでなく、他の病気や怪我なども引き起こしやすい状態を生んでしまいます。
また、普通体型の方であっても、LDL(悪玉)コレステロールの値が高い人などは危険な状態です。本格的に脂質異常症にならないように食物繊維を積極的にとったり、脂質の種類に気をつけておくと良いでしょう。
脂質は動物性の脂に多い飽和脂肪酸(肉、バター、卵黄など)、不飽和脂肪酸に大きく分けられます。不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸(オリーブオイルなど)と多価不飽和脂肪酸(サラダ油などのリノール酸、えごま油、しそ油などのリノレン酸、魚に含まれるEPAやDHAなど)に分けられます。
この3つのバランスをSMPバランスと言いますが、このSMPバランス(飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸)が3:4:3になるのが理想と言われています。
また、ポリフェノールやビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化物質(LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防ぐ)を積極的にとれるとよりベストでしょう。
ポリフェノールで有名なのは赤ワインですが、それ以外にも大豆、野菜、果物、ごまやオリーブオイルなどにも含まれています。ビタミンEはかぼちゃ、ナッツ、魚など、ビタミンCは野菜や果物に多く含まれています。
まとめ 後悔先に立たず
今回の記事をまとめると、以下のとおりとなります。
- 動脈は心臓から出ていく血管、静脈は心臓へ戻っていく血管
- 動脈硬化とは、動脈の内壁が肥厚し硬化した状態で、さらに血栓ができてしまうと、脳梗塞等をはじめ重大な疾患を引き起こす。
- 動脈硬化の3大因子は、脂質異常症、糖尿病、高血圧で、一度動脈硬化になってしまうと回復するのは難しい。
- 動脈硬化にならないためにはとにかく生活習慣に気をつけること
男性は45歳以上から、女性は55歳以上から動脈硬化のリスクが高まると言われています。血管の内部の話なのでいつ動脈硬化が起こるかは全く予測がつかず、そして一度起こってしまうと回復が難しいことから、予防の努力をすることしかできません。後悔先に立たず。ご自身やご家族が突然の悲劇を迎えないように、予防の努力をしておきましょう!