健康診断において、最近注目している人も多いであろう、コレステロール。
「よくわからないけどなんとなく悪いもの」、「善玉と悪玉に分かれていて、悪玉が悪いもの」などの印象を持っている人が多いと思いますが、実はコレステロール自体は身体に必要不可欠なものなので、必ずしも悪者ではありません。今回はコレステロールについて理解していきましょう。
もくじ
コレステロールとは
コレステロールとは、脂質が体内で分解されたものです。体内(血液中)にある脂肪はコレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸、リン脂質の4つに分けられます。
コレステロールといえば悪いもののように思われがちですが、コレステロールは実は生命を保つのに欠かせないものです。血液によって体中に運ばれ、筋肉、神経、皮膚などを作る細胞の細胞膜の材料になったり、胆汁酸の材料としても使われます。胆汁酸は油脂の消化や吸収を助ける胆汁の主成分です。
成人一人当たりのコレステロール総量は100gほどで、脳に25g、筋肉に25g、血液に10g、残りは内臓などに存在しています。
コレステロールの種類
よく善玉コレステロール、悪玉コレステロールという言い方をするため、コレステロールには良いものと悪いものがあると思われがちです。しかし、実はコレステロールそのものは1種類しかありません。この善玉、悪玉というのはコレステロールを運ぶリボタンパク(中性脂肪やコレステロールを乗せて運ぶ船のようなもの)の種類の違いで区別しているだけです。
リボタンパクは4種類あり、主に中性脂肪を運ぶのがカイロミクロンとVLDL、主にコレステロールを運ぶのがLDLとHDLになります。LDLはコレステロールを細胞や組織に運ぶ役割を持っています。逆にHDLは細胞や組織から余分なコレステロールを引き抜き、肝臓へ運びます。
善玉と悪玉の真実
そして、世間ではLDLが悪玉、HDLが善玉と呼ばれますが、決してLDLそのものが悪いわけではありません。むしろ、各組織にコレステロールを運ぶという重大な役割を担っています。
にもかかわらずLDLが悪玉と呼ばれる所以は、LDLが余ってしまってどこにもコレステロールを供給できない状態になって血液中に増えすぎると、いずれ血管壁の中に染み込んで行き、中のコレステロールが血管の壁に溜まって動脈硬化を進めてしまうことにあります。溜まったコレステロールによって血栓ができて、そこで血液が止まってしまうんですね。逆にHDLは余分なコレステロールを回収するということで、動脈硬化を抑える働きがあるため善玉と呼ばれているんですね。
健康診断などで表示されるコレステロール値は、血液中のLDLやHDLの量になります。なので、LDLが少なく、HDLが多い方が好ましいというわけです。ただし、LDLの中でも、小型LDL(スモールデンスLDL)と呼ばれるものは、超悪玉とも呼ばれ、動脈硬化を起こしやすいです。LDL値が低かったとしてもこれが多ければ危険な状態です。脂質異常症の専門医がいる病院であれば小型LDLの量を検査することができますので、心配な方は一度検査をしてみると良いでしょう。
LDLが多過ぎたり、HDLが少なすぎると?
LDLが多過ぎたり、HDLが少なすぎる症状は、それぞれ高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症と呼ばれ、脂質異常症の一種となります。
どちらになっても体内にコレステロールが多すぎる状態になるので動脈硬化を引き起こしやすく、そこから脳梗塞や心筋梗塞などの致命的な症状にもつながります。
LDLの減少、HDLの増加方法
LDLの増加原因としては、肥満、不規則な生活、運動不足、ストレス、遺伝子の異常(遺伝的要因)などが挙げられます。逆にHDLの減少原因としては、肥満、喫煙、運動不足などがあります。
なのでLDL及びHDLを正常な値に戻すには、肥満の解消、規則正しい生活習慣、定期的な運動(特に有酸素運動)、禁煙、ストレスをためないこと、などを心がけると良いでしょう。
また、食物繊維や、良質な脂肪酸(不飽和脂肪酸、オリーブオイルやしそ・エゴマ油、魚に含まれるEPAなど)はLDLの減少に効果がありますので、積極的に摂取しましょう。
LDLの酸化
LDLに関しては、量が多すぎることに加え、LDLが酸化してしまうことも動脈硬化の要因になります。この酸化は活性酸素という物質により起こります。
活性酸素は本来呼吸によって入ってきて、菌や異物を溶かして体を守るものですが、活性酸素が増えすぎると体内の組織や細胞を攻撃します。LDLもその攻撃を受けて酸化してしまうのです。
活性酸素が増える要因としては、紫外線やタバコ、排気ガス、大気汚染、農薬、食品添加物、酸化した食用油、焦げた食材、強いストレスなどが挙げられます。これらも意識しておくと動脈硬化のリスクが少なくなります。
食物のコレステロール値はそこまで気にしなくても良い?
ところで、「コレステロールを多く含むものは食べ過ぎないようにしている」などの話をよく聞きませんか?確かに食物にはコレステロールが含まれているものがあるので、コレステロール値が増え過ぎないように、と気をつけている方もいるようです。
しかし、実は人間の体内にあるコレステロールの7割〜8割は肝臓で作られたもので、基本的に体内のコレステロール量は、肝臓が正常になるようにコントロールしてくれています。食物から取り入れるのは2割〜3割であり、かつ食物の含むコレステロールは2分の1〜3分の1しか吸収されないため、食物のコレステロール値自体はそこまで気にしなくても良いというのが今の通説です。
ただし、これは正常な人の話で、すでにコレステロール値(LDL)が高い人は、吸収率も高くなるため注意が必要です。すでにLDL値が高い人は、食事のコレステロール量を制限し、1日200mg以下にすることが推奨されています。しかし、例えば鶏卵はコレステロールを210mg含んでいますので、結構気を付けないとあっという間に200mgをオーバーしてしまうでしょう。植物性のもの(大豆製品など)ならほとんどコレステロールが含まれてないので、積極的に活用しましょう。大豆製品はタンパク質も豊富に含んでいますので、そういう面でもおすすめです。
まとめ コレステロールは身体に必須のものであるが、増えすぎると動脈硬化を引き起こすことも
今回の記事をまとめると、以下のとおりとなります。
- コレステロールは脂質が分解されたもので、細胞膜の材料となったり、胆汁酸の材料になる非常に大切なもの
- コレステロール自体に善悪はなく、コレステロールを運ぶLDLとHDLがそれぞれ悪玉、善玉と呼ばれている
- LDLはそれ自体が悪いわけではないが、増えすぎると余ったコレステロールが血栓を作り、動脈硬化を引き起こす
- LDLが多過ぎても、HDLが少な過ぎても動脈硬化の要因となる。これらは脂質異常症の一種。また、LDLは酸化にも注意
- LDLとHDLを正常に戻すには、肥満の解消、規則正しい生活習慣、定期的な運動(特に有酸素運動)、禁煙、ストレスをためないことなどが有効
- 体内のコレステロールの内、食物から取り入れるのは2〜3割で吸収率も悪いため、食物のコレステロール値自体はそこまで気にしなくても良い。ただし、すでにLDL値が高い人は吸収率が高いため注意
コレステロール自体は悪者ではないのですが、増えすぎることで動脈硬化を引き起こすことは事実です。動脈硬化は本当に怖い病気で、死に直結することがしばしばあり、症状は突然出てしまいます。
これを避けるためには、やはり規則正しい生活を送ることです。突然の悲劇を生まないためにも、コレステロール値が現在高い人は生活習慣を見直してみましょう。